とちぎの住まいづくり

[ 塩谷郡高根沢町宝積寺 ]vol.13

子どもからお年寄りまで楽しめるアトリエに。カンキチ工房 大金久実杞さん

塩谷郡高根沢町は、“皇室の台所”といわれる「宮内庁御料牧場」を中心に、さまざまな農産物が豊富に生産される食の宝庫。交通の便もよく、生活環境も充実しているため、移住者も多い街です。鬼怒川橋付近、県道10号沿いにアトリエをかまえ、多肉植物を毛糸やフェルト素材でアレンジした個性豊かな作品をつくっている「カンキチ工房」のカンキチさんこと、大金久実杞(くみこ)さん。今回は、大金さんに高根沢町の魅力を伺いました。(2020.08月)

植物や動物、生きものの命を大切にしてほしいとの思いをかたちにした大金さん。アトリエにはさまざまな多肉植物を使ったオリジナル作品を展示・販売している。

生きものを育てる大切さを伝えたい

私のアトリエ兼ショップ「カンキチ工房」では、手仕事の魅力、植物(生きもの)を育てる大切さを直接伝えられたらと、多肉植物をアレンジした作品制作や販売をするほか、ワークショップを開いたり、学校や自治会などで出張教室を行うなどの活動をしています。

このアトリエが高根沢町に移転してもう7年! そもそものきっかけは、お隣りにあるドッグカフェ「dogrun & café slow」のスタッフとして働いていた知人が、ここでイベントをするから出店しないかと声をかけてくれたことがはじまりでした。

「dogrun & café slow」の横隣りにある「カンキチ工房」。緑に囲まれ、風が抜けていく心地いいアトリエ。

この場所との運命的な出会い

さっそく下見にこの店を訪れてみると、店の後ろ側にドッグランが併設された貸し切りのバーベキュースペースを発見。その片隅にあった小屋を見た瞬間「借りていい?」と、聞いてしまったんです。当時、作品を作ったり、販売する自分のアトリエは益子町にあったのですが、ちょうど引っ越しを考えていたところ。これは運命的な出会いだと直感しましたね(笑)。OKをもらった後は、もともとは事務所として使われていたこの小屋を、アトリエとして使うためDIYすることに。床貼りからペンキ塗りまで、地道にリノベーションをして、やっとの思いで2013年3月、この街で「カンキチ工房」は新たなスタートをきりました。

高根沢町の魅力が見えてきた

「dogrun & café slow」のイベント出店の誘いがきっかけで、高根沢町に移転したのはいいけれど、当時はまだ何もこの街のことはわからずにいた私。それでも、昼ご飯を食べに行ったり、アトリエで使うものの買い物に行ったりと、街歩きを楽しむように。すると、今まで気づかなかった街の魅力が少しずつ見えてきたんです。

大金さんの作品も販売している、人気の地元レストラン「ビストロ プランデプラ」。「もはや親戚みたいな仲なんです」と話す大金さん。

この街は「本田技術研究所」をはじめ、大手メーカーの工業団地が近くにあり、県外から移住してくる人が多い街。昔からこの街で暮らす地元の人と、新しく移住してきた人が、バランスよく入り交じり暮らしていけるのも、長く地域に住む人が移住者を受け入れる懐の深さがあるからだと思います。それがこの街の住みやすさの大きな理由のような気がしました。古民家風の建物でのびやかな保育を実践する保育園や、楽しい催しを行う図書館やゴルフ練習場、ホームセンター、おいしい飲食店から病院などの施設やお店が充実しているので、客観的に見ても快適に暮らしていける街なんだなぁって。

高根沢町は観光スポットがいっぱい

うちのお客さんにも県外から移住された方がいますが、みな生まれも育ちも異なるため“国内多民族国家”みたいで、いろんな地方、地域の暮らしぶりをうかがえます。うちのアトリエには犬がいるので、最近では植物だけでなく、みなさんと動物の話をするのも楽しい時間です。

アトリエには県外から車で来るお客さんが多く、どこか寄り道できるおすすめのスポットを聞かれることがあります。地元の名産を手に入れられる道の駅や直売所、餃子屋、ブドウ園、御料牧場、水上アスレチックのある鬼怒川グリーンパークなど、あれこれ迷わずに栃木の良さを体感できる場所を紹介できるのも、この街の魅力がたくさんあるからだと思います。高根沢町は「行ってみて!」って紹介できるスポットが凝縮している、まさに見どころ満載の街なんです。

今年、道の駅として新たにリニューアルした「元気あっぷむら」。地元の名産品の販売はもちろん、温泉や宿泊施設も完備。
新鮮な地場野菜が揃う「たんたんプラザ」は、いつも大にぎわい。手作りの加工食品も評判。

地域の人がつながるアトリエに

「カンキチ工房」は、とても小さなアトリエですが、地域や年代に関係なく、みんなが交流できる、地域の人と人をつなげる架け橋のような存在になれたらと思っています。出張教室ではおもに、好みの多肉植物をコケで包み、毛糸で巻いてあげる、毛糸のコケ玉づくりを行っています。自治会ではご年配の方の参加も多く、教室を通して仲良くなったりするのですが、それが縁となって、自分の畑で採れた野菜なんかも持ってきてくれたりするんですよ。

幼稚園の時にワークショップに参加したというお子さんが、その頃に作った毛糸のコケ玉が、すくすくと大きくなったからって、アトリエにみせにきてくれたりもして「あー、コケ玉もあなたも大きくなったねぇ」なんて、しみじみすることも(笑)。そんなあたたかなつながりが生まれるのもうれしいですよね。「カンキチ工房」もいつの日か、この街の観光スポットのひとつになれたら、とても幸せですね。

多肉植物にカラフルな色の糸をまとわせた、新感覚テーブルグリーン「corocco(コロッコ)」と、大好きなペットといつまでに一緒にいられるようにと、誕生したオーダーメイド作品「どうぶつプランツpuppu(プップ)」。
看板犬でもある「コロ助」と一緒に。小さな工房からは、たくさんの笑顔と大金さんのさまざまな願いが溢れていた。

vol.13
塩谷郡高根沢町宝積寺
カンキチ工房 大金久実杞さん
宇都宮市出身。動物病院で看護師として勤務したのち多肉植物と出合い、独学で花業としての技術を習得。「植物はいちばん身近なペットだよ」をコンセプトに『カンキチ工房』を設立。イベント出店のほか出張教室など、植物を通じてさまざまな活動を展開している。
https://cankichi.jp