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文化と歴史

冬至の風習

掲載日: 文化と歴史
冬至の風習

冬至からわずかに昼が長くなる

冬至(とうじ)は、二十四節気の一つで、太陽黄経が270度になる時をいう。北半球では、太陽の南中高度が最も低くなる日で、今年は12月21日がこれにあたる。この日を境に昼が少しずつ長くなるので、「冬至から畳の目だけ日が長くなる」とか「冬至十日目から米一粒ずつのびる」などともいわれている。

かぼちゃを食べて風邪防止

この日、県内の多くの地域では、トーナス(かぼちゃ)を食べる。「冬至トーナス」といって、これを食べると「中気(脳血管障害のこと)にならない」、「風邪をひかない」、「金に不自由しない」といわれる。かぼちゃに小豆を入れて甘辛く煮込んだ「いとこ煮」も郷土料理として知られている。小山市、下野市、野木町など県の南部では、蒟蒻(こんにゃく)を煮て食べた。そうすることで、腹の中の砂がとれるという。他に粥やソバ、けんちん汁などを作って食べる家もある。

いとこ煮。かぼちゃと小豆を煮込む。

冬至の日に「ゆず湯」

冬至には「ゆず」も欠かせない。この日にゆず湯に入ると「風邪をひかない」という。冬至は「湯治」、ゆずは「融通」にかけたもので、江戸の銭湯が客寄せとして冬至にゆず湯をたてたのが始まりとされる。ゆずの果皮に含まれる酸味や香りは、体を芯から温めてくれる。

ユズ。ミカン科の常緑小高木。場所によっては大きく成長する。主産地は高知県、徳島県。栃木県では茂木町が産地として知られる。

また、冬至に漬けたゆずの味噌漬けを正月や節分に食べると中気にならないといわれる。宇都宮市上河内地区や茂木町などがゆずの産地で、ゆず巻き大根、味噌漬け、砂糖漬け、ほど焼き(ゆずの中を抜いて味噌を詰め、焚き火などで焼いたもの)などもこの時期に食べるご馳走として知られている。

ゆず巻き大根。千切りにしたゆずを大根で巻いたもの。よく乾かしてから甘酢につけ、味がよくしみこんだところを食べる。

火難除け、無病息災を祈願する行事も

冬至の頃は空気が乾燥し、火事が起きやすい季節である。そのため、県の南部を中心に火難除けに関する事例も見られる。佐野市では冬至の日に汲んだ水を母屋の屋根にかけた。足利市でも水を汲んで屋根にまき、水を徳利(とっくり)に入れて神棚に供えた。茄子や菊の茎を庭や竈(かまど)、囲炉裏で燃やす家もあり、その火に当たると中気にならないとか、風邪をひかないという。これらの風習の多くは廃れてしまったが、小山市の網戸神社の権兵衛稲荷では、現在も冬至の行事が見られる。地域の人々が、人の形が刷られた短冊(ヒトガタ)に名前と生年月日を書いて、火にかざし、無病息災を祈願するもので、この時にヒトガタが高く舞い上がるほど縁起がよいという。

権兵衛稲荷の冬至の行事(小山市網戸・2013年)

無事に正月を迎えられるように

冬至は衰えつつあった太陽の光が復活する日であり、また正月の準備を始める直前でもある。季節的には寒さのピークの一つであり、病気にかかりやすい時期といえる。こうした節目に特別なものを食べ、特別な行事を行うことで身についた穢れを祓い、新たな季節をのりこえようとしたのだろう。


篠﨑茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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