室内のような屋外のような「縁側」のあるワンルーム。

宇都宮市 荒井さんご夫妻(入居日:2018年9月)
「将来、車椅子でも快適な暮らしがしたい」
という荒井さんご夫妻に息子の慎司さんが設計したのは、室内のような屋外のような「縁側」のあるワンルーム。
そこには老後の明るく快適な暮らしのイメージがありました。
住まう人に家を合わせる、新しい住まいのつくり方を紹介します。

荒井さん宅

老後の暮らしをイメージ

閑静な住宅街。そこに荒井さんのお住まいはありました。白い箱のようなフォルムに木の格子が印象的で、緑の芝生と白のコントラストがすっきりとしたラインを引き立たせています。
ヒノキの格子戸を開けるとあらわれるのは広く長い「縁側」。
縁側にあふれる光が室内まで届きます。

この家に住むのは60歳代の荒井さんご夫妻。
ご両親の介護の経験もあり、将来、車椅子を使うことになっても自由に移動できる平屋がいいと考えていました。
「家がいくら広くても、車椅子で自由に動けないとつまらないですよね。ドアも自分で開け閉めできないし、外を眺めることもできない。今度、住む家は全部引き戸で、車椅子でも動きやすく、外が見える家がいいなと思いました」。

車椅子でも動きやすく、外が見える家

自由に変える間取りと動線

設計をしたのは一級建築士である息子の慎司さん。
ご両親の老後を見据えた住まいをつくるのに選択したのは、トラス構造の家でした。
本ページ最初の写真を見るとわかりますが、室内から縁側まで天井に梁のような長い構造体が見えます。これにより強度を保ち、ワンルームの大空間を支えています。

ユニークなのは、この構造体に沿って可動の間仕切りを入れていること。
「障子の間仕切りや、キッチンや水まわりのあいだに入れた棚など、すべて簡単に移動できます」。
現在、ワンルームの中央にリビング、左右に夫妻それぞれの寝室を設けていますが、「最初、寝室は広かったのですが、リビングが広いほうがいいかなと間仕切りを移動して寝室は小さくしました」とご夫妻。

暮らし方や気分によって、空間を仕切ったり、動線をつなげたり。
ワンルームの使い方を自由自在に変えられるのが大きな魅力です。

落ち着いた雰囲気のリビング
縁側
障子

室内でも外を感じる縁側

荒井邸の大きな特徴でもある「縁側」のようなウッドデッキ。
そこは、住まい全体の3分の1を占めています。

外部のようですが、縁側の両側には壁があり、収納や手洗い場を設けています。格子戸には鍵がかかり、その前にはカーテンもあります。まさに縁側は室内空間にもなり得るのです。

慎司さんは
「建築面積が小さいので、〈兼用する〉空間がいいと思うんです。玄関兼縁側。室内兼屋外。決めない方がいいと思うんです。この室内のような屋外のような縁側があることで、外との境界が曖昧になって、外に出なくても外を感じることができます」。

小さな家とは思えないほどの開放感に「中からは外がよく見えますが、格子戸やガラス戸があるので、外からは室内がほとんど見えず、安心なんですよ」と荒井さん。格子戸には鍵がかかるので、夏場は窓を開けたまま網戸で寝られるのもうれしいそうです。
明るく開放的な空間、暮らしに合わせて自由に変えられる動線。
荒井さんご夫妻に寄り添うやさしい住まいを見せていただきました。

♦造作収納を備えたキッチン。壁はなく可動棚でリビングとの空間を分けている
♦縁側に設けた手洗い場。バーベキューのときにも重宝

♦縁側が玄関に。引き戸を開ければどこからでも出入りできる 
♦「近くに住む孫がよく遊びに来るんですよ」と笑顔の荒井さんご夫妻