焼杉と塗り壁の外壁。
新しいデザイン住宅のような、日本の昔の家屋のような

下都賀郡 Iさんご夫妻+お子さん4人(入居日:2018年11月)

のどかな田園風景に溶け込むI邸。
焼杉と塗り壁の外壁が、新しいデザイン住宅のようでもあり、日本の昔の家屋のようでもあり、見る者に新鮮な驚きを与えます。
ここに住むのは有機農業を営むIさんご夫妻と子ども4人(取材時8ヶ月、2歳、4歳、6歳)の6人家族。
美しい風景とともに、光や風を取り込む住まい、のびやかな家族の暮らしを紹介します。

自然と共生する家

有機農業を営む家

リビングに足を踏み入れたとき、思わず「わあ」と声が出ました。
目に飛び込んできたのは、緑の芝生、耕したばかりの畑と、その向こうに広がる金色の麦畑。
「風がひゅーと通り抜けるのがすごく気持ちいいんです」と言うIさん。
大学で環境学を学び、卒後後、有機農家として起業しました。
現在はこの地で60種類以上の野菜をつくっています。
「自然の循環システムを保ちつつ、農薬や化学肥料を使わないで作物を作る有機農業をやりたいと思いました」と話します。

家を建てるきっかけを聞くと、
「以前は築50年ほどの平屋を借りて暮らしていたんですが、夏は蒸し風呂のように暑く、冬は吐く息が白くなるほど寒かったんです」。
また、井戸水だったため、田植えの時期になると水が枯れてしまったりと苦労があったそうです。

Iさんご夫妻は家づくりをはじめていくうちに、住まいと仕事場を兼ねる快適な家をつくるためには、建築士に依頼するのがいいだろうと思いました。お話を聞いていくと、静かな口調の中にも妥協しない信念のようなものを感じます。
ご夫妻はいくつかの家を見学するうちに長谷川拓也建築デザインのつくる家に惹かれるようになりました。
「この家いいな、すてきだなと思うと長谷川さんの設計した家だったんです」。

子どもが走りまわれる家がいい

長谷川さんとの最初の出会いは3年ほど前になりますが、その間に家族も増え、住まいのプランも少しずつ変わっていきました。しかし、ご夫妻が一貫して望んだのは、子どもが走りまわれる家、そして日当たりのよい明るい家。
「私は田舎で育ったので、広い庭がほしいなと。裸足で走りまわれる家が憧れでした」と奥様。
I邸の家の南側には家屋いっぱいの長い縁側があり、その縁側と室内が自由に行き来できます。またリビング、子ども部屋、寝室は引き戸を開ければつながり、ぐるっと回れるのびやかな動線になっています。

6人家族のにぎやかなIさん一家。
長い縁側からは子ども部屋、リビング、寝室とどこへでも出入りできる

リビング

床はオーク、天井は杉を採用し、無垢材のぬくもりが心地よい。
天井いっぱいの開口がすっきりした印象に

職・住を兼ねる家

I邸を設計した長谷川さんに話を聞くと、美しい田園風景に溶け込む住まいの設計ということはもちろんのこと、「Iさんは農家という職業柄、職・住が一緒で、家にいることが中心になります。そのため、居心地のよい暮らしができるように作業場と住まいのバランスを考えました」。
作業場の土間を住まいの一角にまとめ、外からの出入口を設けたことで、住空間はすっきりと美しい空間を保っています。

さらに、日当たりを望まれたIさんに、夏は日差しを遮り涼しく、冬は中まであたたかな日が入ってくるように軒の長さと高さを緻密に計算しました。そのため、「冬は本当にあたたかくて、昼間は薪ストーブをつけなくても十分でした」とIさん。
夏は、高窓や地窓を多く設けているため、南から北に風が抜け、涼しく快適な住空間を保っています。
自然の恵みをたくさん受けて、作物も人も住まいも育っていく。Iさんご家族ののびやかな暮らしを守る住まいができました。

外観

切妻の屋根、焼杉の外壁、長い縁側が調和した住まい。焼杉はIさんご夫妻が工務店と一緒に焼いてつくったもの。
「張り終わったときはおおーっと思いました」とご夫妻

♦子ども服や小物の制作をするためにつくったミシン部屋と奥様の作品 
♦リビングにある小上がりの和室 

♦風情ある玄関。高窓から明かりを取り込む
♦畑で作業するIさん。60種類以上の作物をつくり、農薬や化学肥料はいっさい使わない

設計:長谷川拓也

設計:長谷川拓也(ADT長谷川拓也建築デザイン)

Iさんの家は農家ということ、家族が多いことから、昔の農家のイメージを思い描きながらも、職・住それぞれの場が快適であることを心がけました。広い敷地で四方が人目に触れるため美しい外観であることも重要です。自然の恵みを生かした住まいで、心地よく快適に暮らしてくれたらうれしいです。