栃木県茂木市の版画家、見目陽一さんの作る版画は、自然のエネルギーであふれています。


「茂木の里山で育った私の作品には、昆虫、小動物、草や花がかならず登場します」という見目さん。
山歩きとスケッチが日課と言ってもいいほど、「散策」が大好きで、里山の自然をそのままに作品に生かしています。

ある冬の寒い日に、見目さんの山歩きに同行する機会がありました。
「この時期にしか、こんなすっきりとした山を見ることはできないよ」とのこと。
見上げればすっかり葉を落とした山は、土の色が透けて、やわらかな山肌を見せています。
「いいでしょう? この景色も」と満面の笑み。
日々、山に入る見目さんにとって、自然の移ろいはなにより生の営みを感じる幸せな時間のようです。

北向き地蔵群
北向き地蔵群

「木にさわるとエネルギーが伝わってくる」

という見目さんが手がける木口木版画(こぐちもくはんが)は、木を輪切りに切り出し、かたい木口を版木として彫る精緻な作品です。自然なままの木のかたちもユニークですが、見目さんの構図や作風もとってもあたたかみがあります。
虫たちが集まって喜んでいるような『饗宴』という作品は、見目さんの若いときの代表作で、まさに虫たちが宴を楽しんでいるようです。

饗宴
饗宴

また1997年からしもつけ新聞に連載された『しもつけの野仏』は、見目さんが山で出会った名もない野仏を作品として注目を浴びました。「この仏様を彫った職人さんの気持ちを想像しながら」作品を作ったといいます。その場所に静かにたたずむ野仏は、四季の美しさはもちろんのこと、そこに住む人々を守り、ともに暮らしてきた歴史を伝えます。

「大自然と共存する人々に惹かれる」

遥かのシンドバット
遥かのシンドバット
郷の風
郷の風

という見目さんは活動の幅も広がり、中国やアフリカなどに旅をしては新たな作品を発表し続けています。人間も自然の中の一部だとあらためて感じさせてくれる見目さんの作品。小さな木口木版画の中に、自然の美しさ、そこに生きる生物たちのエネルギーがあふれています。

見目陽一

見目陽一

1949年、栃木県に生まれる。茂木高校を卒業。1981年に日本板画院展新人賞、ニュートン賞受賞後、2010年、日本板画院展棟方志功賞、2015年、文部科学大臣賞など多数の賞を受賞。2002〜2009年まで日本板画院理事長をつとめる。海外で個展を開催する一方、木版画教室の講師や木版画コンクールの審査委員長を務めるなど、版画の普及に力を入れている。2009年より、とちぎ大使をつとめる。