古い家の価値を見い出す

「リフォーム」「リノベーション」という言葉を耳にします。政府の空き家対策もあり、需要も高まってきているように思います。家に対する考え方にも変化がでてきているのでしょう。新しい場所に、新しい家を建てるのもいいと思いますが、親世代やその前に祖父母の世代が建てた家を直して住むというのも魅力的に思えます。

古い家には、その次代にしか存在しない希少なもの、味わい深さがあります。たとえば、ていねいにつくられた柱や敷居、鴨居、縁甲板の床に使われた無節の木とはとても高価なもの。現代に同じ仕上げにしようとしても材料そのものが手に入らないこともあります。丈夫な梁や建具、土台も、新しい家にはない「価値」があります。今ある財産を上手に活かし、新しい空間をつくるのも、ひとつの暮らし方だと思います。

リフォームとリノベーションの違い

国土交通省の定義では「リフォーム=新築時の目論見に近づくように復元する(修繕)」「リノベーション=新築時の目論見とは違う次元に改修する」となっています。

直して住むと言っても、「メンテナンスのためのリフォーム(修繕)」と「暮らしに合わせたリノベーション(改修)」では、規模も費用もまったく異なります。家族構成やライフスタイルの変化に合わせて住まい方も変わります。難しいとは思いますが、10年先、20年先を想定し計画することが重要になってきます。

構造体がそのまま使えるか、修繕が必要か

リフォームやリノベーションには、現在住んでいる家を直して住む方法と、新たに中古物件を買って直して住む方法があります。直す範囲によっても大きく費用が異なりますが、構造体がそのまま使えるかどうかは重要な項目になります。

既存の構造体の劣化が激しい場合は修繕費用がそれなりにかさみます。補強工事が多い場合は建て替えてしまったほうがよいこともあります。既存の建物に制限されずに間取りを変えたい方、耐震性や断熱性を高めたいという方は、プランの自由度が高い新築がいいかもしれません。

リフォームは安い?

リフォームは新築よりも安いというイメージがある方も多いと思います。最小限の修繕をして住む場合はお得なケースもあると思います。

しかし、耐震性能、断熱性能を上げるための大がかりな修繕が必要になることもあり、簡単に「お得」とは判断できないケースも多いのが実情です。解体や、補強にはそれだけ手間と工賃がかかりますから、新築同様の坪単価の費用がかかる場合もあることを頭に入れておきましょう。

どの範囲を修繕するか、どの程度の修繕をするかによっても費用は大きく変わってきます。また仮住まいや引っ越しの費用、申請や登記費用も予算に入れておかなくてはなりません。

メンテナンスは新築も中古住宅も必要

古い家を修繕する際には、基礎、構造、耐震性、断熱性など、現状を把握する必要性があります。たとえば断熱性能でいうと、木造住宅の場合、基準が制定されたのは1980年。それ以前の建物には断熱材がまったく入っていないこともあります。また2000年に基礎の基準法が改正されたので、それ以前の建物だと無筋基礎の場合もあります。

まずは素人判断せずに専門家の目で家の診断をしてもらうことが重要です。構造上の問題がある場合は耐力壁を設ける、補強する、断熱・気密性を上げる場合は断熱材を入れる、サッシを交換する等の必要があるかもしれません。白アリ被害があれば基礎工事をする必要もでてきます。

新築にしろ、中古住宅を購入するにせよ、家のメンテナンスはいずれ必要になってきます。何かの節目に家を手直ししておくことは、家の寿命をのばすためにも、家族が快適に長く暮らすためにも必要なことです。

家族が安心して住める家、楽しく暮らせる家をつくってほしいと思います。家族でじっくり話し合い、今後の暮らしを想定し、それぞれにふさわしい住まいづくりをしてください。


●プロフィール

一級建築士 山形 誠
1961年3月生まれ。有限会社山形建築研究所主宰。