『通り土間の家』敷地面積:49坪、延床面積:27坪、建築面積:16坪、家族構成:夫妻+子ども2人(計4人)

見学会での出会いは重要!

今回は私が設計した中でも個性を出しつつローコストを実現した住宅について書いていきたいと思います。今回のお施主様は自分のライフスタイルや好みがしっかりある方で、家のイメージが明確でした。

  • ・真っ白い豆腐のような建物
  • ・広い土間空間

それらの要望を盛り込んだ注文住宅を実現するため、さまざまな設計事務所が開催する完成見学会にも何度か足を運んでいたようです。

さまざまな見学会に参加したお施主様。「建物の感じは好みだし、設計者とも合いそう」と思い、予算の話をすると……。「予算内での家づくりは難しい」という返答が多かったようです。注文住宅は諦めて建売住宅も視野にいれ考えないといけないと思っていたところ、私の設計した『縁側の家』の広告を見て、見学会に来てくれたのが始まりです。

余談ですが、見学会はいいですよ!写真とは違い、その建物を五感で味わえますし、設計者の雰囲気や会話が合うか、合わないかを直接感じることができます。会ってみたら設計者は意外とやわらかい雰囲気の人だった。思ったより背が低かった、小さかった……。こんなことも感じることができます(実際言われたことがありました(泣)。私、身長169cmです。意外と背が低くすらっとしてないので悪しからず)。

意外とできる! 設計事務所の家づくり

『意外とできます。設計事務所と創るローコストの住まい』
これは、そのときの広告に載せた内容ですが、お施主様が悩んでいた予算の問題にピッタリはまりましたね。私の仕事はお施主様の要望を叶えつつ、想像もしていなかったライフスタイルを提案することだと思っています。「予算がない」というのも要望の一つだと私は思うのですね。だから坪50万円でも坪100万円でもやることは同じです。その予算を叶えつつ、その場所でできる最大限のライフスタイルの提案。それを考えて実現していくのがやりがいですし、とても楽しいです。

ローコストにするためのポイント!

ローコストの住まいで重要なことは、建物をシンプルな形状にすること、そして面積を小さくすることです。シンプルな形状は構造や材料のロスが少なくつくりやすいため、工期の短縮をはかることができます。早く終わればその分費用は少なくすみます。面積を小さくするのも同様の理由です。ただ、面積を小さくすると必然的に狭く窮屈な感じになりますので、そうならないようにアイデアをちりばめていきます。

玄関の引き戸を開けると外と中の土間が繋がり、多目的なスペースが生まれます。

用途を兼用させる

まずは空間を広くするアイデアとして「用途を兼用させる」ことがあげられます。兼用させることで各部屋が細切れに分かれないため、広い空間を確保できます。ここでは、外部土間スペース、玄関・玄関ホール、LDKを兼用させています。

玄関、リビング、廊下、外部空間など曖昧な場所が使い方や広がりを生むと考えています。

空間の繋がりを意識させる

要望にもあった土間空間を内外に至るまで連続させ、建物内部を通り抜けられるようにしました。こうすることで建物内外をぐるぐる回ることができるため外部を含めた広がりを感じることができます。土間は裸足、靴、スリッパなど何を履くかにより外の使い方もできるので機能的にもばっちりな材料です。木製の玄関引き戸をすべて引き込めば、外部と内部の土間が一体的に繋がりますので部屋の使い方の幅も大きく広がります。

2階は腰壁のみです。リビングから連続しているのでワンルームを壁で仕切った間取りの住まいになりました。

視線の抜けを意識させる

中2階のアトリエと吹き抜けのあるホール、2階の壁は腰壁とすることで家全体がワンルームでつながります。寝る時は視線を遮り、立つと約30帖の天井が見えます。天井が続いていくことで広がりを感じさせています。天井が延びていくのと、壁で遮断されてしまうのとでは、空間の広がりに大きな差が出ます。その他、周辺の状況を見ながら1階は東西に2階は南北に十字に視線が抜ける窓を設けています。この窓は視線が抜けるだけでなく風も抜ける通り道になります。
よく広さを聞かれますが、広さだけでは語れない部分がこういう窓からの視界だと思います。

重要なところにはお金をかける

続いてローコストとは言ってもカッコよく見せるのに必要になるポイントです。ローコスト住宅がローコストに見えたら魅力はないですね。安っぽく見せない、カッコよく見えるからこそ、私に頼む理由があると思っています。ポイントとなるのは、重要なところにのみ予算をかける、です。

まず、今回の家は1階と2階とをまたぐように配置し、上下階の繋がりを意識させている建物の顔ともいうべき南側の大きな窓。(外観写真参照)サイズは2.5m角でもちろん特注品です。費用としては一般的な掃き出し窓の2倍程度。普通の掃き出し窓を2箇所つけるのであればこの大きな窓を1箇所つけたほうが、オリジナル感が出てとても高価に見えます。

もう一つはヒノキの玄関引き戸です。外土間と内土間を一体的に繋ぐという機能性、そして玄関は家の顔というイメージを継承しその部分には予算を使いました。1枚の幅1.2m、2枚全開放すると2.4mの開口部になります。建物の顔となる南側窓と入口の顔となる玄関引き戸をオリジナルで製作することで家全体のグレードアップを図りました。

ヒノキの玄関の引き戸。家の顔になる部分なので、お金をかけるところはきちんとかけるのがポイントです!

設備の一部はお施主様が調達する

その他、私の事務所では定番になりつつある照明器具、便器、洗面器などは、お施主様自身が調達し、支給することでコスト減につながりました。シンプル形状・抑えた面積・予算をかけるポイント、これらを検討しさまざまなアイデアを盛り込むことで建売と同程度の費用でオリジナリティ溢れる注文住宅を実現することができました。あ、費用は建売住宅と同程度でも、ばっちりの注文住宅ですので、労力は3倍増しになります(笑)。お会いしてから完成までの約1年間は間取りを検討したり仕様や色を決めたり現場で打ち合わせをしたり、やること満載です。

<余談>白い壁がグレーになった理由

「真っ白い豆腐のような外観」という要望が、なぜグレーの塗り壁になったのか。外壁を塗り壁にした経験のある方ならわかると思いますが、塗り壁というのは割れを防止したり、凹凸のないフラットな壁面をつくるため、サイディングに比べて下地の工程が多いです。工程を簡単にいうと、まず木の壁 →黒の壁(防水面となる) →モルタルを塗ったグレーの壁(壁面を均質にする) → 仕上げ材の順に外壁を塗ります。

下地とはいえ、どの工程の壁も味がある表情が生まれます。その下地の一つ、モルタルを塗ったとき、お施主様がとても気に入りまして、急遽グレーの仕上げに変更になったのでした。ずっと白の外観をイメージしていた私はびっくりして、何度もグレーでいいかを確認しました。が、気持ちは変わらないようでしたのでこの外観で完成です。このような変更できるのも注文住宅の良さかもしれませんね!何はともあれデザイン、機能性、金額とも満足できる住まいが完成してよかったです!

外壁は、1.木の壁 → 2.黒の壁 → 3.モルタル → 4.仕上げ材の順に仕上げていきます。モルタルの色をお施主様が気に入ったため、外壁は白からグレーに変更。

荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
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