年数を経た天井や梁が白い壁に映える空間デザインに。

リノベは新築よりもコストが安い?

これまで新築の建物についていくつか書いてきましたが、今回はローコストのリノベーションについて書きたいと思います。新築か、中古住宅を買ってリノベーションか、ここは悩む方が多く、私のところにもその問い合わせは意外と多いです。

費用に関していえば、リノベーションは比較的安くなると思われがちですが、それは若干の間取り変更と仕上げを一新する程度の話です。「暑い寒い」に対しての性能を向上したり、水回りを変更したりすると外壁や屋根・床の下地、設備の配管も含めたすべてをフルリフォームしていくため、かなりの費用がかかります。

リノベーションは、基礎、柱や梁は既存のものを使うとはいえ、解体する費用、それを処分する費用などが意外とかかるんです。解体するにもどの程度の日数がかかるのか不明確で、解体してみたら木材が腐っていたということもあるので、新築にくらべて目に見えない部分が多く、建設会社の施工費も高くなりがちです。

好きなエリアに住めるのがリノベのメリット!

リノベーションにそんなに費用がかかるのなら新築のほうがよいように思いますが、リノベーションのほうがいいポイントもあります。たとえば交通の便や場所の雰囲気が好きなエリアを見つけても、土地の物件がない、予算内の土地が購入できないこともありますよね。好きなエリアに土地が見つからなくても、中古住宅なら見つけることができるかも知れません。

また、自分の愛着ある家や土地に住み続けたい場合、今住んでいる住まいをリノベーションできるというのも大きなポイントです。

年数を経た味わいのあるかっこよさ

昔ながらの趣あるたたずまいに魅力を感じる人にはリノベーションは向いているかもしれません。アンティークと言えばいいのか、時間をかけ年をとったものは新しいものにはないかっこよさがあります。

最近は「それふうに見せる」という技法もありますが、昔から使われてきた本物の木材にはしっかりとした味がでるものです。それを生かすことができれば、新築にはだせない味わいのある住まいになります。

築40年のアパートを低予算で一新する!

さて。今回紹介するリノベーションは、築40年のアパートの2階の2世帯分の部屋を合体し30坪の住まいにしたいという依頼でした。もっとも大変だったのは予算です。400万円〜500万円! その予算で水回りを一新。そして先ほど書いた「暑い寒い」という環境も改善したいというもの。もちろん、2室をつなげて一つの住まいにするので、間取りも一新です。

「はぁ???」ですよね。「嘘だろ???」ですよね。「ムリムリ…」ですよね。私も最初に話を聞いた時はそんな状態でした。ただ、できることなら予算内で要望をかなえてあげたいと思い、現場調査がてら、そのアパートを一度見に行きました。建物は思ったほど悪くなく、年季の入ったかっこいい梁もあり、せっかくならこれを見せてあげたいと俄然やる気になりました。予算はさておき、ですが。

上がビフォー、下がアフターで、同じアングルから撮影しました。

家の中に『断熱箱』を入れる

まず考えなければならないのは、断熱性能をどうするかということ。外壁を撤去し、断熱材を入れるとなると予算的に絶対ムリです。そこで、屋根、外壁はいじらず断熱材を入れる方法を検討したところ、家の中に「断熱材の箱を挿入する」ことを思いつきました。既存の箱(住まい)の中に天井、壁、床を断熱材で包んだ、いわゆる『断熱箱』を挿入します。くつろぎたいリビング、ゆっくり眠りたい子供室・寝室。そこが最低限快適であるなら生活できると考えました。

白い壁に、梁が映えるかっこいい空間!

まず、天井を撤去しました。すると年数を経たなんとも味のある梁と屋根の下地が出てきました。開放感のある空間が生まれそうです。『断熱箱』は白色とし、既存の古い木材を使った梁との対比が色濃く出るように考えます。かっこよく年をとった空間に、真っ白な箱。その古さと新しさの対比によってお互いをよりよく魅せることができます。

予算内でできるか、というのが問題ですが、水回りは最低限の仕様、トイレや洗面所、照明器具はお施主さんに支給してもらい、ギリギリですがなんとか予算内におさまりました。

分離発注、ローコストのアイデア、そしてお施主さんの覚悟がなければできなかった住まいです。覚悟と言ってしまうと何か恐ろしいですが、いい部分があるのだから悪い部分も受け入れてほしい、といった感じのことです。予算内におさめるためには、水回りの仕様や断熱材の範囲など我慢することも多いということです。

古い空間に白い『断熱箱』を挿入し、新旧を対比させることでお互いの魅力が引き立つ。古さと新しさの相乗効果が出た空間!

断熱箱』の中は冷暖房がバッチリ機能!

後々話を聞いたところ『断熱箱』の効果はバッチリで、リビングや寝室は冷暖房がしっかり機能しとても快適とのこと。ただ、やはり断熱材を入れていないキッチンなどは暑いし、寒い、ということでしたね。

今回、このリノベーションをさせてもらえたことは自分にとってもとてもいい経験になりました。低予算でもかっこいいマイホームはつくれるという例を示せたと思いますし、昨今話題になっている空き家問題の解消にも一石を投じることができたのではないかと考えています。時と場合によりますが、無理難題というのは建築士魂に火がつきますね!

『断熱箱』のリビング。ロールカーテンを下ろすことで快適な空間に。天井高は2.2mと低く設定したため、冷暖房が効きやすく、こもり感もあって落ち着く。天井が高く、開放的なダイニングキッチンとの対比が魅力的。

荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
https://in-de-code.net
E-MAIL:info@in-de-code.net