『縁側の家』広い縁側をもつ住まい。外と内をゆるやかに繋ぎ、部屋の延長として使ったり軒下空間にも使える自由度の高い住まい。

幅広く自由に使える広い縁側

第4回目は私の両親の住まいでもある『縁側の家』について書いていきたいと思います。敷地は散歩などをするご高齢の方も多い閑静な住宅街です。明るい家、そしてできるだけローコストで、ということが大きな要望でした。

終の住処ということもあり、新しい提案をすることより、今までの生活に馴染んだものを自然に取り入れた方が落ち着くのだろうなと考えていました。思い浮かんだのは「縁側」で、もとの住まいはリビング外にサンルームがあり、縁側のように使っていました。また、じいちゃんの家もリビングの外には軒下空間があり、そこが縁側のような役割をしていたので、「縁側」をキーワードに展開していきました。

縁側という空間はとても機能的で、部屋の外にあることで守られているような落ち着く場所になりますし、部屋の延長としても使うことができます。いわば外部と内部との橋渡しをしてくれるので、幅広く自由な住まい方が可能になります。

窓を開放すれば、外までが連続します。透明な屋根により室内は明るいです。ここは雨の日でも安心な物干しスペース、下駄箱を置いて玄関のようにも使える多目的な場所です。

玄関、サンルーム、物干しも兼ねる空間

先ほど書いたプライバシーを守ってくれるのはもちろん、逆にご近所さんとのおしゃべりをする憩いの場になったりもします。そして洗濯物を干す場所にもなります。今回は家の1/3を縁側にすることもあり、「玄関」という大役も担わせました。

実は『縁側の家』にはちゃんとした玄関がありません。えー、玄関がないって??? と思った方もいるかもしれませんが、そもそも玄関について考えてみてください。家の顔? 靴を脱ぎ一段上がるところ? じいちゃんの家は一応玄関はありましたが、いつもリビング前の軒下空間で靴を脱ぎ、掃き出し窓から出入りしていましたのでほとんど使ったことがないです。当たり前と思っていても案外、必要ない空間はあるかもしれませんね。

この住まいでは、縁側に下駄箱を置くだけで玄関に早変わりです。縁側にいろいろな役割を兼用させていますが、こうすることで建物面積が縮小でき、結果としてローコストにも繋がります。物干しスペース・サンルームで2帖、玄関で2帖、これだけでも4帖もの広さの縁側がつくれます(この家では19帖もの広さを確保しました)。

夏の夜には、窓を開けていても格子戸があるため安心して眠れます。小さいお子さんがいても戸を閉めておけば道路に出てしまう心配がないのでそれも安心ですね。

明るさは折半屋根を使って解決!

広い縁側をつくったのはいいですが、次に問題になるのは明るさです。部屋の前に縁側があると室内がどうしても暗くなりがちです。

そこで考えたのが折半屋根というもの。よく工場などで使われることが多いギザギザの屋根ですが、実はあの屋根、明かりとり用の透明なものがあるんです。その屋根を設置することを考えました。しかも工場で使われるぐらいですからコスト的にもバッチリな素材です。ただ、これを使うと見た目が工場みたいになってしまうので、外観を調整しながら設計すると、室内まで明るくそして雨が入らないサンルームのような場所になります。鍵付きの格子戸をつければ防犯的にも安心できるので窓全開で眠ることもできますね!

間取りを自由に変えられるのも大きな魅力!

この住まいは可変性のある間取りも魅力の一つです。箱のような住まいの両脇には障子で仕切った個室2室を設けています。この個室は、上部の細かい梁に沿って90cmずつ、広さを自由に変えられます。時間の大部分をリビングで過ごすならば、個室は寝るだけですので4帖半程度に小さく、個室にいる時間が多くなれば8帖ほどの広さにし、個人の時間を楽しむということが可能です。

ずらっと並んだ収納扉がありますが、もちろんこの扉も移動ができます。見せる収納、隠す収納、そして扉の有無が水回りへアクセスする動線に変化を与えます。部屋の近くにトイレがほしいのであれば、扉を外してそこからアクセスします。

高齢になるにつれ、ライフスタイルに変化が生じることがあるかもしれませんが、そんな変化にも対応できる自由な間取りを提案しました。

上の写真を見てください。左側にある障子は上部の梁に沿って変えられるので個室の大きさを自由に変更できます。収納も、扉をつけずにオープンに使用したり(上)、下側に扉をつけたり(中)、上側に扉をつけたり(下)、自由自在に変えられます。奥に水回りをまとめているので収納の扉をリビング側にすれば隠す収納、水回り側にもっていけば、リビング側からは見せる収納になります。

また、扉や棚をとれば、水回りへのアプローチ動線を変えたり、通路を広くしたりすることもできます。

分離発注もコストを抑える一つの方法

今までコストを抑える手段をいくつか書いてきました。空間を兼用させ面積を小さくする、工場のような屋根材を使う、または既成の小さい材料を組み合わせたトラス構造とする、などです。

そしてもう一つ、「分離発注」という方法でコストを抑える方法があります。読んで字の如く、バラバラに工事をお願いするということですが、実際はよくわかりませんよね。設計事務所を例に流れを説明すると、通常、設計事務所に設計を依頼すると間取り図をつくります。その後、その図面をもとに施工会社に見積もりをとり、金額が合意できれば工事着工ですが、施工会社はその見積もりに経費というものをとります。そこには従業員に支払う給料や材料を発注したり届けたり目に見えない、さまざまなものが含まれます。大手メーカーですと広告費というのもあるかもしれません。

分離発注とは、大工さんや、電気屋さん、基礎屋さんそれぞれに直接お願いすることでその経費をなくしてしまおうという考え方です。

手間がかかることは忘れてはいけない

もちろん工事費はバッチリ下がります。私が設計する場合は、工事の工程や図面通りにできているかを私自身が調整するので、とても負担が大きい工事になるんですけどね。

今はインターネットで照明器具やキッチン、便器なども買える時代になりましたので、お施主さんが直接購入し、支給品として現場に収めるというやり方もコストを抑える一つの方法だと思います。

ただ、安くなるということは必ず理由があることもお忘れなく。故障した時の補償についてはお施主さん自身で調べてもらうことになりますし、製品に傷があった場合は誰が悪いのかという所在も不明です。基本的に工事現場に商品を運んでくれるところは少ないので、自分で買って現場まで運ぶという手間もかかります。その辺りも含め手伝ってくれる方もいますが、負担をかけているということを忘れてはいけません。

手間をかけて家づくりをしたい人にはおすすめ!

自分で注文することも含めて家づくりを楽しみたい、現場に商品を運んだりするのも苦じゃない。そう思っている方は分離発注や施主支給品を使いコストを下げるのはとてもいいと思います。

他にも方法はありますので自分にあったやり方を選択し納得の金額で理想の家づくりをしてもらえたら幸いです。


荒井 慎司

イン-デ-コード design officeを主宰。1979年2月18日宇都宮市に生まれる。宇都宮日建工科専門学校卒業後、TAKES設計事務所に入社。2008年、独立し、現在に至る。業務内容は、1.住宅、店舗、事務所、インテリアなどの企画、設計・監理、2.リフォームの企画、設計・監理、3.家具のデザイン等。
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