NISAとは投資の優遇制度

金融庁が2020年12月末に公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、NISA(ニーサ)、つみたてNISAの口座数、買付額ともに、増加傾向が続いています。NISAとは、ご存知かと思いますが、投資の際にかかる税の優遇制度のことで、正式には「少額投資非課税制度」といいます。イギリスの個人貯蓄口座であるISA(Individual Savings Account)をモデルにしています。

通常、投資で得た収益(配当金・分配金や譲渡による利益)に対して20.315%の税金がかかるところ、税金がかからないのがこの制度の大きな魅力です。たとえば1万円の利益が出ると、通常2031円の税がかかるのですが、一定期間(NISAは5年間、つみたてNISAは20年間)税金がかからずに受け取ることができるというわけです。NISA、つみたてNISA口座への急激な増加は、コロナ禍に長期資産形成に興味をもつ人が増えたことがひとつの要因ですが、雑誌やユーチューブなどで魅力的な情報を見聞きする機会が増えたことも大きいと思います。

NISAは、いい制度であるとは思うのですが、加熱気味の報道に、ファイナンシャルプランナー(FP)の立場としては、リスク管理についての情報が足りないのではないかと思います。また金融教育が遅れている日本で、きちんとした判断ができない人もいるのではないかと不安に思います。

NISA、つみたてNISAはやるべき?

FPの立場としては、初対面の方に「NISA、つみたてNISAをやったほうがいいですか?」と聞かれたら、「それはわかりません」と答えます。なぜなら資産運用はリスクを伴うからです。投資の経験がない人が無防備に大きな投資をしたら失敗する可能性もあります。2008年の世界的な金融危機(リーマンショック)や、今回のコロナショックのように全世界での経済情勢が大きく変わることもあります。そのときの経験を教訓にしなくてはなりません。

また、お金の使い方には、人生の価値観が大きく反映されています。同じ収入があったとしてもその使い方は千差万別。資産形成を考える際に一律、この方法がいい! とは一概に言えないものです。FPとしてはその人の人生のプランもわからないままに無責任に金融商品をおすすめはできません。まず生活設計、それをふまえたうえで、資産形成の方法を考えるというのが原則だと思います。

投資をはじめる際には、テレビや雑誌やインターネットの情報を鵜呑みにせずに、生活設計とともに考えていってほしいと思います。自分の人生に責任をもてるのは自分だけです。実際に、ハイリターンの株や投資信託や仮想通貨などに投資をして大暴落し、相談にこられる方もいますので、ぜひ慎重に検討してください。どのように資産を形成していったらよいかわからない場合は、まずFPに相談してみましょう。

初心者は「長期」「分散」「積立」が基本

人生設計もふまえて、余裕資金(10年以内に使う予定のないお金)で投資をしたいと思った方には、「長期・分散・積立」をキーワードに、「小額からコツコツと」投資することをおすすめします。これを守ることでリスクを最小にできるからです。この観点からいえば、「NISA」より「つみたてNISA」が初心者には向いているでしょう。商品も「つみたてNISA」のほうが、長期投資に向く商品が選別されています。

今回は「つみたてNISA」についてお話ししていきますが、運用するお金は、中・長期間(10〜20年)は動かしても問題のないと思われる資金を当てましょう。このときも余裕資金の全額を当てるのではなく、一部を運用するのが原則です。

たとえば、15〜20年後に絶対に必要になる「住宅のメンテナンス費用」、あるいは「子どもの教育資金」などを準備したいという場合は、20年間非課税で運用できる「つみたてNISA」はよい制度だと思います。つみたてNISAで運用できる最大額は年間40万円で、月額にすると約33,000円です。減額も中断も可能ですが、まずは少額からはじめてみましょう。一般的に銀行であれば1,000円単位、ネット証券の場合は100円単位で金額の設定ができます。

項目つみたてNISA
利用者の年齢20歳以上
非課税期間20年
年間非課税枠(額)40万円まで
最大非課税枠(総額)800万円
対象商品一定の条件を満たした投資信託、ETF
投資方法定期的・継続的な購入
出金(売却)制限なし

つみたてNISAの運用方法

つみたてNISAは国が認めた商品が厳選されていますので、その中から銘柄を選びます。ネットや雑誌などでおすすめ商品などが紹介されていますが、正直、何がいいというのは誰にもわかりません。ただ、これは投資初心者の基本ですが、バランスがとれているものを選ばれるといいと思います。株を中心にした商品なら全世界の企業の株式で配分し、リスクが分散されているものがよいと思います。ひとつの国や企業がつぶれても他でカバーできるというところで安定した運用がはかれます。

また、投資初心者の参考にしてほしいのが日本の年金のポートフォリオ(資産の最適な保有率)。年金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で管理・運用されていますが、その際の収益率は年3%強です。運用資産の配分は、国内・外国の株式が25%ずつ(計50%)、国内・外国債券が25%ずつ(計50%)で、4資産分散といわれる基本法則で安定した運用をはかっているのです。年金は国民から預かる大切な資産ですから、その管理・運用についてリスク管理は徹底されています。こういう情報はホームページなどで見られますので、ぜひ参考にしてください。

どこで口座を開設するか

どこの金融機関でNISA口座を開設するかも重要です。NISA口座は1つしか持てず(NISAとつみたてNISAの併用は不可)、一度取引すると翌年まで変更ができないので、よく検討して選びましょう。銀行、証券会社、ネット銀行など選択肢はありますが、商品数が多い、積立設定の自由度が高い、手数料が安いなど、メリットのあるネット証券がおすすめです。

資産運用にはさまざまな方法があります。ぜひ、おいしい情報に惑わされずに着実な選択をしてほしいと思います。運用に悩まれる場合はFPに気軽に相談してみましょう!


(株)一期コンサルティング ファイナンシャルプランナー

船田 勝太
国内大手金融機関勤務後、独立系FP事務所である一期コンサルティングに入社。主に企業向けの金融教育やセミナー講師・メディア取材を通じてFPとして活動。その他、資産運用・ライフプラン・住宅資金相談・保険相談のFP業務も行っている。プライベートでは2児のパパとして育児にも邁進中。