風景を住まいの中に取り込む方法

家と庭が調和した住まいは美しいものです。広い庭がなくても暮らしに景色を取り込む方法があります。たとえば桟や枠のない大きなガラス窓をリビングに設けて、外には花や緑、素敵な椅子などを置くと、視線は自然に外の風景に向くでしょう。また、大きな開口部ばかりでは単調になってしまうので、廊下の突き当りに見える緑、高窓から見える空、小窓から差し込む光など、変化に富んだ見え方を考慮することも大切です。

市街地にある敷地では、1階にいる人の目の高さで良い眺望が得られるケースは少なく、方法を考えなければなりません。2階にリビングを設けるのもひとつでしょう。公園や隣家の樹木、遠くの景色など取り入れたい美しいポイントが見つかれば、そちらに向け開口部を設けるのもひとつの方法です。周辺に良い景色がない場合は、自分の敷地内に植栽で囲まれた庭、中庭などをつくるなど工夫が必要です。トップライトだって、空を見るための大きな開口部となります。

その一方で、見たくない景色もあります。雑然とした街並みや店舗の裏側、隣家のトイレや浴室の窓など。とくにリビングやダイニングといった場所から目に入る場合は、壁の向きや位置、袖壁などを工夫する必要があります。

見えてほしくないものが広範囲にある場合は、床や窓の高さを変える。垂れ壁や張りだしたテラスなどで遮る。植木や垣根などの植栽、すだれ、格子、塀などの外構で遮るのもひとつの手段になります。

家の緑が街の風景になる

庭に植えられた緑は、その家のものであると同時に、外部の人たちの緑でもあります。家の前を通る人たちも、緑を観賞し、木陰を楽しんだりします。

緑は植えた直後から、どんどん成長して豊かな葉を広げてくれます。四季折々に葉を落としたり、新緑を芽生えさせたりして変化を見せ、風が吹けばそよいで見せてもくれ、四季や自然というものを教えてくれます。つまり、緑は命を持っている優れた家の仕上げ材なのです。

日本のように庭に植えられた私的な緑が、街の大半を占めるような国では、住宅の緑は、いつも外部からの目を意識して植えることが必要であると思います。庭の緑、カーポートの立木、塀の緑化、生垣など。すべて街並みにこぼれる緑であることを意識したいものです。それによって風景として美しい建物が増えていけば、街はより楽しくなると思います。

アウトドアリビングをつくろう

一般的な都市型住宅では、庭と呼べる空間を確保することがむずかしいのですが、工夫次第で、ちょっとしたオープンスペースを生み出すことができます。

庭にはアプローチの庭、眺める庭、使う庭、サービスヤードの4つの種類があると思います。一般的にはアプローチの庭、眺める庭には関心が強く、使う庭やサービスヤードの重要性を忘れがちですが、家が狭い場合は、屋外をアウトドアリビングとして有効活用することもできます。

庭はこうあるべきという固定概念を捨て、暮らしに合せた庭をつくり、快適な屋外の生活が楽しめるようにしたいものです。そのためには、室内のインテリアと同様に、庭の使い方を検討し、囲い方、照明、さらに植物の配置などを十分に検討してほしいと思います。暮らしに景色を取り込むということを考えていくと、建物が風景の中になじんでいる景色をつくっていくということにたどりつくように思います。


●プロフィール

一級建築士 山形 誠
1961年3月生まれ。有限会社山形建築研究所主宰。